閉経が近いかも、と思った日から、気持ちが少しずつ変わった。
若い頃は、生理が鬱陶しくて、来なければラクなのに……なんて思ったこともある。
でも、今の私は、少しの寂しさと恐怖を感じている。あの面倒さから解放されるなら、むしろありがたいことのはずなのに。
「終わる」という言葉が、妙に現実味を帯びてくる。
女として終わる気がする。もう、前の自分には戻れない気がする。
誰かに言われたわけでもないのに、そういう考えが、勝手に浮かんでは消えない。
夜になると、少しだけそれが濃くなる。
「終わる気がする」は、こういう瞬間にくる
正直、更年期だからといって、特別な出来事はない。
でも、些細な違和感が生まれる。
夕方、スーパーで買い物をしているとき。献立と値段のことを考えながら、いつものようにカゴに入れていく。
ふと横を見ると、若い女性がスマホを見て笑っていた。
それだけのことなのに、なぜか目に残る。
特別きれいなわけでもないのに、なんとなくこれからの人という感じを受けた。
私は、夕飯のことを考えている。それだけなのに、その違いがやけに現実的で、少し遠く感じた。
そして、レジに並びながら、ガラスに映った自分の顔を見た時、「やけに疲れているな」と思った。そのあとで、「あれ、こんな顔だったっけ」と自分が自分でないような気がした。
そこから、なぜかそのまま……「もう戻らないのかもしれない」とつながる。
年を取ったというより、どこか内側の流れが変わっている感じ。
その原因が、閉経や更年期なのかもしれないと思うと、静かに不安が広がる。
閉経=女性の終わりではないと分かっていても
綺麗事を言うならば、閉経しても女性は女性のままだ。
頭では理解している。
でも、気持ちはそこまで追いつかない。
分かっているのに、不安になる。
大丈夫なはずなのに、怖くなる。
そのズレが、じわじわと残る。
この不安は、あまりきれいなものじゃない
正直に言うと、この不安はあまり上品ではない。
若い人と比べてしまうし、鏡を見て落ち込むし、「まだ女でいたい」と思っている。
誰かに話すには、少し気が引ける気持ちだと思う。
でも、きれいにまとめると嘘になる。
たぶん私は、まだ、自分を『女性として見ていたい』んだと思う。
それが少しずつ揺らいでいるのが、怖い。
ホルモンの変化だと知っても、不安は残る
更年期や閉経前は、ホルモンの影響で不安を感じやすくなるらしい。
それを知ったとき、少しほっとした。
自分のせいじゃないのかもしれない、と。でも、それで終わりではなかった。
理由が分かっても、気持ちはそのまま残る。
「じゃあどうすればいいのか」は、別の問題として残る。
それでも、何もせずに終わるのは嫌だった
ある夜、どうしても気分が沈んでいた。
理由ははっきりしないけれど、このまま寝るのが嫌だった。
クローゼットを開けて、普段なら選ばない色のパジャマを着た。似合っているかどうかは分からない。
でも、「まだ自分で選んでいる」という感じがした。
それだけで、少しだけ落ち着いた。
別の日、自分のためだけに少し高い買い物をした。
誰かのためでもなく、ちゃんとした理由もない。
ただ、自分の機嫌のため。
そういうことをすると、ほんの少しだけ「戻る」感じがする。
変わっていく中でも、なくならないものがある
最近、自分の体に触れるときの感じが少し変わった。
前はどこかで評価していた。若いかどうか、きれいかどうか……。
今はもう少し静かに触る。
「こういうものなんだな」と思いながら、それでも雑には扱わない。そこに、ほんの少しだけ優しさがある。
ときめきとは違うけれど、何もなくなったわけではない。
怖いままでも、まだ終わっていないと思いたい
閉経が怖い。その気持ちは、まだ消えそうにない。
でも、勝手に「終わり」の烙印を押されることだけは、静かに拒んでいたい。
減っていくものはある。でも、それと引き換えに手に入れた「自分を雑に扱わない」という新しい手つきを、私は結構気に入っている。
鏡の中の自分と、これからも生きていく。
「もう終わり」と決めるには、まだ、あまりにも早すぎる。


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